
ヴィヴィス5歳
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シャラシャラと鳴る、金色の鎖はとてもきれいで。
「・・・ねぇ、ヒコさん悪いことでもしたの?」
父上と、父上の友人のヒコさん。それと僕とで遅めの昼食を摂っている最中、どうしても気になって訊ねた。
「ん?ああ、コレか・・・」
ヒコさんは両手に繋がれた鎖をシャラ、と鳴らして見せてくれた。重そうに見えるが手に取るととても軽い。
形は手錠。鎖は一般的なものよりは相当長い。
「・・・」
ヒコさんは考え事をするように顎に手を当てて黙ってしまった。
訊いてはいけなかったのかも知れない、と僕が後悔し始めたとき。
「ヴィーは」
ヒコさんは僕を見て、
「コレをしていると、悪いことをしたように見えるかい?」
訊いてきた。とても真剣な顔で。
やはり、気分を害してしまったのだろうか。
「えぇと」
僕は焦った。
「ヒコー、うちの子あんまりいじめないでくれ?」
父上が笑いながら、お茶をのんでいる。
「僕は」
思うことを言うことしかできない。
「ソレは手錠に見えるから、悪いことしたのかな、って思ったの」
ヒコさんはまっすぐに僕を見ている。
少し、悲しそうに見えるのはきっと気のせいではない。
「でも」
心の中で罪悪感じわじわと広がる。
「ソレはとってもきれいだとも、思ったよ」
言い終わって、なぜだか泣きたくなって、俯いていると。
「そうか」
ヒコさんが頭をなでてくれた。
「どうよ、ヒコ。うちの子は賢かろう?」
父上はくつくつと笑っている。
顔をあげると、ヒコさんも笑っていた。
「ほんと、アズに似ず素直な子だよ」
なにをいうか、と父上とヒコさんは冗談を飛ばしあう。
仲がいいなぁ、と思ってぼんやリしていると、
「ああ」
ヒコさんがまた、僕の方を向いた。
「そんな顔しないでよ」
言って、ヒコさんはまた僕の頭をなでる。
「そうだ、質問に答えて無かった」
”悪いことでもしたの?”
その答え。
「悪いことはしてないよ」
悪いことしてたら速攻俺がしばきに行くって、と父上が横から茶化す。
怖い父さんだよね、とヒコさんは流す。
「コレはね、自分の魔力を自分の中で循環させるための魔法具なんだよ」
「?」
難しい。
「ヒコ、ヴィーはまだ5歳だって。難しいだろ」
父上は笑う。
「そうだった」
ヒコさんは少し困った様子で少しふざけてる様で。
「そうだねぇ・・・。うん。私たちの村でね、1年前に女の子が生まれたんだけどね」
ヒコさんは国境の近くの里に住んでいると聞いている。
「その子、とても強い魔力を持って生まれてきたんだよ」
魔力。
「自分でコントロールできないほどのね」
強い魔力は、力と長寿をもたらす。
「まだ何もわからない子供だけど・・・だからこそ、かな。最近になって周りに影響が出始めてね」
しかし、コントロールできなければ暴走することもある。
「どうも、その子から魔力が漏れ出してるようでなんだよ。体のに蓄積できる容量以上の魔力がじわじわとさ」
「難しいね」
僕が言うと、ヒコさんは、まあね、と答えた。
「今はまだいいけど、子供の成長は早いからこれからどうなっていくのかが解らないんだよ。」
このまま魔力は増え続けるのか、それとも落ち着くのか。
「コレは、その子の魔力が増え続けた場合の対応の実験なんだよ」
薬とかはあまり使いたくは無いしね、とヒコさんは続けた。
「で、その娘はどっちに傾きそうなんだ?」
父上が割り込んでくる。
「今のままだと、魔力は増え続けて暴走にいたると思うね」
「そうか。続けろ」
ヒコさんはまた僕のほうを向いて、
「その子は私と魔力の質が近かったから、本人に使う前に私で試してるんだけど」
「魔力のじゅんかん?」
先程ヒコさんが言っていた言葉。
「そう。魔力を放出させずに自分の体の中で循環させる。まぁ、本人に使う場合はもう少し改良するけれど」
僕には難しい話だったが、なぜだか僕はその子に会ってみたいという気分になった。
「ごめんね、難しい話をして」
ヒコさんは苦笑しながらまた僕の頭をなでた。
「ヴィー、考えることはいいことだぞー。全力で悩め」
父上はにやりと笑ってヒコさんごしに僕を見ている。
「もしかしたら、そんなに遠くない未来にその子をここへ連れてくるかもししれない。そしたら、ヴィー、その子と遊んでくれる?」
会ってみたい。
答えは決まっている。
「うん。待ってる」
赤ちゃんだからまだ会話はできないだろうけど、とてもとても、その子に会ってみたい。
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「んー・・・」
寝苦しい。重い。
「・・・?」
窓に目をやるとまだ外は暗い。ひんやりとした闇が広がっている。
なぜこんな時間に目が覚めたのだろうか。
「びび」
「!?」
呼ばれて見ると、寝苦しい原因がそこにいた。
軽い子で本当に良かったと思った。
「ルー・・・降りて・・・」
ルコウは思いっきり私の掛け布団の上に座り込んでいる。
寝苦しいはずだ。
のそのそとルコウは床に降り始める。
「びびが」
私が?
「ぶつぶつ何か言ってて、何言ってるか聞こうと思った」
寝言か。
どうやら、寝言でルコウを起こしてしまっていたらしい。
「ああ、ごめんなさい。起こしてしまったのね」
言って、ルコウの頭をなでてやる。ひんやりとした髪が
なでて・・・?
「びびー?」
「・・・ん」
「だいじょうぶー?怖い夢みたー?」
夢。
さて、何の夢を私は見ていたのだろうか。
「大丈夫。怖い夢ではなくって、少し懐かしい感じのする夢だったから」
ヒコさんと、父と、私と。
何を話していたのか。
「ルーと同じ鎖をつけた人と話をしてた夢だったよ」
「ふー?その人と会ってみたいなー」
「私といればいつか会うことになるだろうと思うわ」
会えば、きっとルコウがどこの子かも解るだろう。
「ふふー」
ぼーっと考えている間にルコウは私のベッドにもぐりこんで来ている。
「あったかいー」
ついでにすでに枕も取られている。
まあ、私はもう目がさえてしまって眠れそうにないのでよしとしよう。
「・・・ルー、おやすみ」
「おやすみなさいー」
言ってすぐに、規則正しい寝息が聞こえてくる。
いつから起きていたのだろうか。
とりあえず、一度この子を連れて国に帰ったほうがいいかもしれない。